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JA共済は昭和48年に静岡県の中伊豆と大分県の別府にリハビリテーションセンターを設立している。これらは医療・福祉・介護の3事業を行う全国でも数少ない総合型の施設である。今回は、「社会福祉法人 農協共済別府リハビリテーションセンター」の障害者自立支援施設で障がい者の方々を支える、作業療法士の笹原紀子さんから訓練にかける想いを伺った。

笹原 紀子(ささはら のりこ)さん

障がいを持った方々がスムーズに社会で働くために、
作業療法士として社会福祉法人 農協共済別府リハビリテーションセンターに勤務。
自立支援、就労支援などを通してサポートを行っている。

大切なのは『諦めずにとことんこだわる支援』

いつも初心を忘れずに取り組む

「別府リハビリテーションセンターに勤めた当初は“模索”の連続でした」と入職当時を振り返る笹原さん。作業療法士を目指したきっかけを語ってくれた。
「大学生時代に母を亡くしたのですが、その時自分は医療や福祉に関しての知識がなく、満足いくような最期を迎えさせてあげることができませんでした。ちょうど友人が医療・福祉に関する勉強をしていたこともあって『私もこういう勉強をしたい』と強く思い、専門学校に通いなおして資格を取りました」。入職当初、現役で学校を卒業した人よりも年上だった笹原さん。当時は年齢だけでなく様々なことに戸惑いがあったという。「作業療法士は利用者さんに対してアドバイスを行い、導いてあげることが求められます。当時は『この方になにをし、どんなアドバイスをしてあげればいいのだろう、これで良いのかしら』と自信が持てませんでしたね」。
10年以上たった今、作業療法士としての経験は長くなったものの「まだまだ手探りの状態です」と自分に厳しい笹原さん。
「ひとりひとりの方の障がいに合った支援があるため、日々勉強し知識を蓄えないとだめですね」と当時の気持ちを忘れずに日々取り組んでいる。

訓練後に復職し、立派に働いている姿がうれしい

現在、主に行っているのは「就労移行支援」。障がいを持つ方がいざ職場に出ると、“6時間持続して作業をする”“指示通りに作業を遂行する”“コミュニケーションをとりながら共同作業を行う”など求められることが多く、そのための訓練はハードルが高い。「初めて就職する方や、社会経験があり、障がいを負ってから復職する方、すぐに就職が決まる方、そうでない方と様々な方がいます。いろいろな訓練に取り組むことで、どういう仕事に向いているかを見極め、自分で自分の適正を把握することが大切です」。
ひとりひとりに合った支援を行う笹原さん、最近印象に残ったエピソードを聞くと、「復職された方ですが、はじめてその方がリハビリセンターに来たときは他の利用者の方々とうまくいかず、喧嘩をしたりと大変でした。訓練をするうちに徐々に変わっていき、無事復職されました。この間職場を見に行ったのですが、すごく立派に働いていてうれしく思いましたね。まだ復職して間もないですが、仕事のスピードも上がり頑張っているなと、少し母親になったような気分になりました(笑)」と優しい笑顔で話してくれた。

「いいところはたくさんあります。そこを伸ばして仕事を探していってほしい」

笹原さんが担当し、実際に就労訓練に励んでいる桐野さんにも今回インタビューに応えていただいた。
「皆さんと同じように作業ができないこともありますが、いろいろなことを任せてもらえるよう自分なりに頑張っています!」と笑顔で応えてくれた桐野さん。普段はパソコンでの作業がメインとなり、学生時代にワープロソフトや表計算ソフトの基本的な操作を勉強したことが活かせているという。「パソコンは得意な方だと思いますが、障がいにより表の列を把握することが困難なため、ひとつひとつをていねいに確認しながら作業をするよう努めています。普段はそれ以外にも植物の管理をしたり、ネームプレートを作ったり、(実務を想定して)請求書や納品書も作成しています」と色々な作業を日々行っていることを教えてくれた。
ひとりひとりの特性を見つけるためにいろいろなことを体験してもらうことが大切と語る笹原さん。インタビューの最後に「桐野さんに限らず、その人のよいところを見つけて伸ばしていき、その人に合った仕事を見つけられればいいなと思います。桐野さんは勉強会の資料なども上手に作ってくれて、すごくわかりやすいなって思っているんですよ」と優しく語っていた。

決してあきらめず、とことんこだわって支援をしたい

「社会復帰された方から『社会に出る前にここで訓練できてよかった』なんていわれると私たちのやっていることに意味があったんだとすごくうれしいです」。利用者の方々に喜ばれる支援を行うために、常に笹原さんが心掛けているのが“とことんこだわって諦めないで支援をする”ということ。「ときには諦めそうになったりすることもありますが、ここは私が手を抜いてはいけない、この方が社会に出る前に私がとことんこだわって支援をするんだ」という思いが大切だと語る。ひとりひとりと真剣に向き合い、後悔のない支援を行うことが利用者の方の社会復帰へとつながる。
最後に笹原さんに利用者の方に対してのメッセージを伺った。「障がいがあっても社会に出て、買い物や食事を楽しんだり、お酒を飲みに行ったり、今までの生活と変わらない楽しいことをしてほしいですね」。“いろんなことにチャレンジしてみることを大切にしてほしい”、笹原さんは利用者の方と二人三脚で社会復帰に向けて取り組んでいる。