Dr.コラム

あなたも他人事ではない!? 「がん」予防のすすめ

がんの早期発見・早期治療のために「検診」への理解を深め、定期的に受診しましょう。

若尾文彦先生

Profile

国立がん研究センターがん対策情報センター長。1961年生まれ。1986年横浜市立大学医学部卒業し、88年国立がんセンター中央病院入局。 以後、放射線診断部医長、がん対策情報センター副センター長を経て、2012年3月より現職。 ホームページ「がん情報サービス(http://ganjoho.jp/)」や「がんの冊子」などを通して、信頼できる わかりやすいがん情報の発信と普及に取り組んでいる。

国内において「がん」と診断された人は年間約100万人にのぼり、死亡原因の第1位を占める怖い病気ですが、早い段階で発見して適切な治療を行うことで生存率は大幅に上がり、ステージⅠで発見し場合の5年相対生存率は9割以上。早期発見・早期治療のために不可欠なのが、国が推奨する「がん検診」を定期的に受けること。そこで、検診の流れや検査項目など、がん検診の基礎知識について若尾文彦先生にお話を伺いました。

全がんの5年相対生存率。がんは発見が早ければ早いほど生存率が高まります。

がん検診のすすめ

国が推奨する「対策型検診」とは

自覚症状のない人を対象に、がんを早期発見し、適切な治療を行うことで亡くなる方を減らすことが目的。予防対策として行われる公共的な医療サービスであり、公的資金を使用して行われます。安全で精度の高い検査方法があり、発見されたがんに適切な治療法が存在することなどが条件に挙げられています。

少額の自己負担または無料で受けることができます。
自治体によって異なるので、詳細はお住まいの自治体にご確認ください。

有意義とされる対策型検診

検診は基本的に健康な人が行うため、健康な体に負担をかけたり、放射線を浴びたりするデメリットもあります。公共施策として行われている「対策型検診」は、そのようなデメリットに対して、検診によってそのがんによる死亡が確実に減少することなど、総合的に見てメリットが上回っていることが認められ、実施されています。

対策型検診の項目は5つ

胃がん検診、大腸がん検診、肺がん検診、乳がん検診、子宮頸がん検診

がん検診はどうやって受ける?

お住まいの自治体の検診方法を確認

自治体によってがん検診の受け方が異なり、検診センターなどで行う集団検診や指定のクリニックなどで行う個別検診に分かれます。また、5種のがんについて個別に受ける場合と、検診時期が重なる複数種のがんについて同時に申し込める場合もあるので、各自治体の「がん検診窓口」でチェックしましょう。

予約

個別検診の場合は特に、指定の医療機関から選んで予約をするケースが大半です。予約が必要な場合は、電話、郵送、インターネット等、各自治体の指定の方法で予約します。検診日程や時間など、気になる点がある場合は、事前に確認しておきましょう。

当日医療機関・検診センターへ

例えば、胃がん検診の検査当日は朝食が食べられないなど、検診によっては条件付きのものもあるので、事前によく確認しておくようにしましょう。また、常備薬やアレルギーがあったり、手術経験がある人はあらかじめ自治体の窓口や医療機関に相談してください。

検診の流れ

検診の流れ
個人の判断で実施する「任意型検診」

対象集団全体の死亡率を下げる公共的な医療サービスである対策型検診に対して、医療機関・検診機関などが個別に任意で提供する、人間ドッグによる「任意型検診」もあります。
こちらは、すい臓がんなど5つのがん以外の検診やCTスキャンなどを用いた検診、また、対策型検診の年齢対象外でも検診を受けることができます。
一方で、追加効果の検証がなされていなかったり、健康保険の適用がなく全額自己負担であったり、検査による体への負担など、個々に検査のメリット・デメリットがあるので、バランスをしっかり考慮しましょう。

対策型検診のがん検診は5種類

がんに対する不安は、誰もが持ってしまうもの。しかし、しっかり検診を受けて「異常なし」となれば安心できるので、5つのがんについて定期的に検診を受けるようにしましょう。一部の検診は自治体によって検診内容や検診間隔が異なるので、よく確認しておくようにしましょう。また、検診から検診の間や検診対象年齢になる前であっても、気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。

詳しくは、各自治体の「がん検診窓口」にお問い合わせください。

詳しい検診の内容はアイコンをクリック!

  • 胃がん検診
  • 大腸がん検診
  • 肺がん検診
  • 乳がん検診
  • 子宮頸がん検診

通常のがん検診で異常ありと診断された人が、怖くなってしまうのか精密検査を受けないケースが残念ながら見られます。
がん検診は、「がんがある」「がんがない」ということが判明するまでのすべての過程を指すので、「異常あり」の場合は必ず精密検査まで受けてください。

日本は欧米諸国に比べてがん検診の受診率が低く、「対策型検診」「任意型検診」を合わせても、肺がんで5割程度、乳がんや子宮頸がんについては3割程度の受診率となっています。「自分はがん家系ではないから」と受診しない人もいますが、遺伝によるものは全がんの1割ほどにすぎません。がんは誰でもかかる可能性がある病気と受けとめて、自分ごと化するようにしましょう。

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