統合医療ビレッジグループ理事長、プルミエール クリニック院長。
免疫治療のエキスパートとして、先進医療から自然療法までを駆使した治療を行っている。
著書に『免疫力をしっかり高めるコツがわかる本』(学研)など。
最近よく耳にする「活性酸素」とは「酸化させる力が強い酸素」のこと。酸化させる力が強いということは殺菌作用も高いということになるため、体に入り込んだ細菌をやっつけるなど、適正な量の活性酸素は体に必要なものなのです。
しかし、過剰に発生すると、余分な活性酸素が細胞と結びつき、細胞が老化します。
身近な酸化でわかりやすいのはさびた鉄。活性酸素が増えると体が酸化する(さびつく)のです。
活性酸素の影響を受けやすいのは血管や内臓で、増えすぎると血管や内臓を傷つけてしまうため、脳梗塞や心筋梗塞、内臓疾患などさまざまな病気の原因になると考えられています。
また、成人病の原因の約90%は活性酸素の過剰増加と言われ、最近では認知症と活性酸素にも深い関わりがあると言われています。
喫煙、お酒の飲みすぎと過剰なストレスは活性酸素の過剰増加の大きな要因です。現代人はストレスによって活性酸素が増えやすくなっていると言われています。
人によってストレスの感じ方は様々ですが、例えば、満員電車による通勤や周囲への気づかいなど、日頃当たり前にしていることも実はストレスになることがあるのです。
また、慢性的な睡眠不足も活性酸素が増えやすくなる原因になります。
人間の体は22時~深夜2時に睡眠をとっていると細胞が効率よく修復されます。しかし、睡眠が十分でないと活性酸素によって傷ついた細胞がなかなか修復しません。
そのほか、空気が汚染されていたり、食品添加物を使用した加工食品の過剰摂取も活性酸素の発生原因になります。
現代人である以上、活性酸素の発生を防ぐことには限界がありますよね。
そこで、重要となるのが「抗酸化」という働きです。
まさに活性酸素と闘う力となるわけですが、年齢とともにこの力は減少し、60~70歳代になると20~30歳代の約1/7ほどになってしまいます。
また、女性の場合は更年期を迎える頃に抗酸化力が低下する傾向にあるので特に注意が必要です。
ということ。
前者は日頃からの生活習慣、後者は抗酸化力のある成分を日常的に摂り入れているかどうかが重要になります。
過剰な活性酸素は、いわば毒素ともいえます。正しい生活習慣を身につけ、ストレスを溜めこまない生活を送れば、毒素は溜まりにくくなります。
つまり、生活習慣病予防を心がけていれば、自然と活性酸素も抑えることができます。
抗酸化力のある成分は、ビタミンA・C・Eだけではありません。ポリフェノールやリコピンにも強い抗酸化力があると言われています。これらはフィトケミカル※と呼ばれる最近注目の成分ですね。
パプリカやかぼちゃ、ブロッコリー、にんじん、トマトのような色鮮やかな食材には、抗酸化力の高いビタミン群やフィトケミカルなどの成分がたっぷり含まれています。
加工品ではなく、フレッシュなものを食べることも大事ですよ。
野菜、果物、豆類、芋類、海藻、お茶やハーブなど、植物性食品の色素や香りなどの成分から発見された物質。
抗酸化力、免疫力のアップなど、健康維持・改善に役立つのではないかと期待され、研究が進んでいます。
代表的なものに赤ワインに含まれるポリフェノール、緑茶に含まれるカテキン、大豆に含まれるフラボノイドなどがあります。
さらに大事なのはバランス。いくら色鮮やかな食品でも、「緑」のものだけ、「赤」のものだけでは栄養が偏ります。いろいろな色の食材をまんべんなく、バランスよく食べることです。それが「カラフル食材を摂る」ということになります。
ときには本能にまかせることも大切です。そういうと、まるで偏食をしなさいと言っているように聞こえますよね。でも、これはそういう意味ではありません。
体内のミネラルバランスが整っている人は、体に不足しているものを察知する力があります。食べたいと思うものは、実際に体が欲しているもので、本能的に体の中で栄養の過不足が起きないように信号を送っているのです。
ただし、食生活の乱れが激しい人はこの機能が正しく働いていない可能性も。まずは一般的に理想とされる食生活に改善することからはじめましょう。ごぼうやきのこなどに含まれるミネラルを積極的に摂ることで体のバランスが整います。
カラフル食材を取り入れる際は、それぞれの素材が持つ成分や性質によって相性の良し悪しがあったり、組み合わせや摂り入れ方のひと工夫で抗酸化成分の吸収効率が上がることもあります。
例えば、にんじん。体内でビタミンAへと変化するβ-カロテンが豊富なことで知られる野菜です。ところが、ビタミンCの働きを抑える酵素があることはご存知でしたか? 実はレモンといっしょに摂ることで、この酵素の働きを抑えることができるのです。
にんじんにレモン汁を絞る。これだけでビタミンCも無駄なく吸収できます。
また、β-カロテンは、油脂と合わせると吸収がよくなるため、
肉や魚、乳製品などといっしょに摂るとよいでしょう。
他にも、β-カロテンやビタミンC・Eなど多種の抗酸化成分を含むかぼちゃに、ビタミンB1が豊富なひよこ豆を組み合わせると、活性酸素の抑制と同時に、疲労回復効果も得られます。このような相乗効果が期待できる食材の組み合わせパターンをいくつか覚えておくとよいでしょう。
調理法も大切です。
例えば、赤パプリカは高い抗酸化成分カプサンチンを含んでおり、 β-カロテンやビタミンCも豊富です。
でも、 β-カロテンは炒めものなどで油といっしょに摂ると吸収効率が上がり、反対にビタミンCは通常熱に弱い性質があります。そこでカリフラワーの出番です。過熱しても損なわれにくいビタミンCを持っているので、これらを組み合わせるとβ-カロテンもビタミンCもたっぷり摂り入れられるのです。
さらに、ミネラルやフィトケミカルは野菜の細胞の間に入ってしまいやすく、普通に噛んでもうまく吸収できないためスープにするのがおすすめです。成分がスープに溶け出して吸収しやすくなるのです。
このように、素材ごとの特性を調理に活かすと、さらに抗酸化成分を効率よく摂ることができるようになりますよ。
たくさんの野菜を使うとよいといっても、忙しくてなかなかできないこともありますよね。そんなときはミックスジュースにしてみましょう。
量はたくさん食べられないといった人にもおすすめです。簡単なので毎日の習慣に取り入れやすく、活性酸素が溜まりにくい体づくりにうってつけです。
市販のものでもよいのですが、できれば必要な素材を選んで自分で作ってみましょう。ちょっとした趣味にもなって続けやすいですよ!
にんじんを使うときはレモン汁を絞るといった、素材の組み合わせのことも忘れないでくださいね。
抗酸化力を上げることは、免疫力を上げることにもつながりますが、そのメカニズムは下のようになっています。
免疫力アップという言葉をよく聞きますが、実は「バランス」が大切です。免疫力が必要以上に高いと、花粉やダニなどのアレルギー物質に過剰反応することもあるのです。
例えば、通常の免疫力を仮に「100」としましょう。ここに病原菌が入ってきます。そのときは自動的に「120」に上がって病原菌を退治します。
反対にアレルギー物質に触れるとします。このときは過剰反応を起こさないように免疫力は「80」に下がる。
このように、そのときどきにあわせて免疫機能が柔軟に対応できるような状態になっていれば、免疫バランスは整っていると言えます。
活性酸素が多くなると免疫バランスは崩れやすく、必要な時に必要な効果を発揮できません。抗酸化力を高める食事は、同時に免疫バランスを整える効果もあるため、カラフル食材を取り入れて健康づくりを目指してみてはいかがでしょうか。