東北ユースオーケストラ × JA共済 SPECIAL SITE

東日本大震災の被災三県(岩手県・宮城県・福島県)を中心とした子どもたちで構成されるオーケストラ。
音楽家の坂本龍一氏を代表・監督とし、毎年3月に東北と東京で大規模な演奏会を行うほか、地元の方々へ音楽を届けるため、有志のメンバーによるミニコンサートなどを継続的に開催。
東北の方々の“心の復興”を目指している。

2020-2021

Chapter 1

度重なる困難にも負けず、
前へ歩み続ける。

2020年3月の定期演奏会に向けて練習を重ねていた「東北ユースオーケストラ」は、東日本大震災に端を発し、被災三県(岩手県・宮城県・福島県)出身の子どもたちをメンバーとするオーケストラだ。2016年以降、毎年3月に定期演奏会を開催していたが、5回目の節目となる予定だった2020年の演奏会は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、残念ながら実施を断念した。
そのときの思いを、ヴァイオリンパートの金杉さんは「みんなで練習を重ねてきて楽しみにしていたので、演奏会の中止が決まった時はとても残念でした。」と話してくれた。「特に、今回は内容も濃い演奏会で自分の中でも(意味合いが)大きかったので、そのときは悲しい気持ちになりました。」と、ホルンパートの田嶋さんも当時の感想を話してくれた。晴れ舞台を失ってしまった喪失感から、しばらく練習に手をつけられないメンバーもいたという。 加えて、新しい生活様式に変わるなかで難しいのが、オーケストラの魅力でもある大人数でのアンサンブルができないこと。お互いの呼吸を合わせることで一つの音楽を奏でてきた彼らの前に立ちふさがる困難は大きい。 しかし、この夏、厳しい状況のなかでも一歩一歩前に進みはじめる「東北ユースオーケストラ」の姿がそこにはあった。

Chapter 2

距離が離れていても、
想いは重なっていく。

例年、定期演奏会後に実施している卒団式が、今年はリモートで行われた。そのなかで、坂本龍一氏は「東北ユースオーケストラ」を巣立っていく団員に向けてこう語った。「将来、世界史的な事件として語られるであろう今のこの時間を皆さんが生きていることは本当に特別なことだと思うので、無駄に過ごしてほしくない。どうやって生きるべきか(自分なりに)考えて過ごして欲しいと思います。」
2020年7月。まだまだ今後の情勢が見えないなかで、メンバーは個人練習やリモートでのコミュニケーションを重ね、さまざまな工夫を凝らしながら、次回の定期演奏会に向けて日々励んでいる。
「世界的に難しい状況だからこそ、自分たちが音楽でできることを突き詰めていきたい。」とトロンボーンパートの福澄さん。さらに、田嶋さんは、「次の演奏会は震災からも10年、定期演奏会がはじまってからも5年と、節目の演奏会になるので、その際に私たちはここまで来れたと、伝える場にしていきたいです。」と、力強く話してくれた。
未曽有のコロナ禍にあっても、個人個人が自分なりの答えを模索して行動するからこそ、離れていても想いは重なり、また皆が集まったときにはこれまでよりも大きな力となって、美しい音色を奏でてくれるに違いない。

Chapter 3

東北と全国の地域で、
描くハーモニー。

彼らがいま試行錯誤しながらも目指すのは、2021年の春に開催予定の定期演奏会。そこで彼らは、「東北と全国をつなぐ協奏」という新しい取り組みにチャレンジする。これは、今年の演奏会での披露を予定していたもので、日本各地の地震や豪雨災害などにより被害を受けた地域から合唱への参加者を募り、「つながる合唱団」を結成。「東北ユースオーケストラ」とともにベートーヴェンの交響曲第九番を協奏する。

姉の瑞穂さんが「東北ユースオーケストラ」の団員であることがきっかけで「つながる合唱団」に参加した福島県在住の樅山(もみやま) 鈴さんは、今年の演奏会を前にした合唱練習のなかでこう語ってくれた。「合唱で舞台に立つのは、初めてです。ドイツ語で歌うこともあって難しいのですが、合唱経験のある方が優しくアドバイスをしてくれるので楽しく練習ができています。私は助けていただくことが多いですが、音楽を通じて、多くの人と1つのことに向かっていくのは楽しいですね。」瑞歩さんも、「(大学に進学してから)離れて暮らすようになってもプレゼントや手紙をくれるくらい仲が良く、私も自分の練習の合間を縫って合唱の練習を見に行きます。苦戦している妹に対して、周りの方が気にかけていただく様子を見て、みなさんに支えていただきながら頑張っていけそうでよかったなと感じています。」と、見守るなかで妹の成長を感じるエピソードを話してくれた。新しい環境の中で、家族だからこそ口にすることのなかった想いが改めて見えてくる。
一人一人の強い想いが重なり合うことで、誰かを勇気づける大きな力となる。「つながる合唱団」との協奏は、東北からスタートした「東北ユースオーケストラ」の復興と助け合いの輪が、全国に広がっていくための新たな一歩となるだろう。

Chapter 4

仲間たちとともに成長し、
これまでの集大成に挑戦。

次回の定期演奏会では、もうひとつ心待ちにしたい挑戦がある。それが、オーケストラの代表・監督である坂本龍一氏が「東北ユースオーケストラ」のために新たに書き下ろした楽曲の演奏だ。2020年3月に披露される予定だった新曲が、1年越しに演奏されることとなる。
クラリネットパートの瑞歩さんは、「この曲はこれまでの活動の集大成となる曲です。東北ユースオーケストラでやってきたことや過ごしてきたシーンを思い出す部分が曲の節々にあります。だから、これまで想ったことや感じてきたことを回想しながらこの曲を練習しています。」と話す。
コロナ禍で練習もままならない中、彼らのこうした挑戦は決して簡単なものではないだろう。2021年の春。度重なる困難を乗り越えた団員たちが、その「成長の証」をどんな音で表現してくれるのか、今から披露される舞台がとても待ち遠しい。

Chapter 5

互いに手を取り合いながら、
力強いチームであり続ける。

新型コロナウイルスの拡大が世界的な厳しさを増す状況のなかでも、それぞれが手を取り合いながら歩みを止めないその姿にこそ、「東北ユースオーケストラ」の強さがある。東日本大震災をきっかけに結成された彼らが響かせ続けてきた希望の音色は、これからも東北を勇気づけ、そしてそれは、他の被災地にも広がっていくだろう。
音楽があるから、何度だって立ち上がれる。演奏会の断念という悔しさを乗り越え、最後の晴れ舞台で演奏できずに卒団してしまったメンバーの分まで精一杯音楽を楽しむ彼らの挑戦を、これからも応援していきたい。

※団員・合唱参加者へのインタビュー・撮影は、2020年2月に実施しました。