介護

認知症を予防するイキイキ生活

毎日の暮らしを改善して脳を元気に。認知症を予防するイキイキ生活

10年後にはシルバー世代の5人に1人が認知症に!?

将来自分や家族が認知症になるかもしれないと思うと今から不安だなあ…。

日本では、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症を発症するといわれているんです。

認知症の種類もアルツハイマー型、脳血管性など複数あり、それぞれ原因や症状が異なります。

けれど、あきらめないでください! 海外では患者数の減少が報告されていますし、予防に関する研究結果も発表されました。

国内の認知症患者数はますます増加の傾向にあり、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症という可能性も

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 九州大学 二宮教授)による速報値
※各年齢の認知症有病率が上昇する場合の将来推計 ※%は65歳以上の人口に対する割合

厚生労働省の2015年の発表によると、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人といわれています。患者数は今後も増え続けていくと考えられており、2025年にはその数が700万人を超えるとされ、65歳以上の約5人に1人を占めると見込まれています。

一言で認知症といっても発症の原因や現れる症状は種類によってさまざま。
なかでも、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症は
「三大認知症」といわれ、認知症全体の約90%を占めています。

大切なのは毎日の過ごし方を改善して予防に努めること

国内では有病率、患者数ともに増加傾向にある認知症ですが、
生活習慣病の見直しが認知症の予防に大きく貢献するという研究成果も発表されています。

認知症予防のために日常生活でできること

認知症を予防することができるのは嬉しいけど、具体的にどんなことをすればいいんだろう。

毎日の生活の中で“脳を活性化させること”を心がけて、脳を若々しい状態に保つことが認知症を予防することにつながります。

「社会・知的活動」「運動」「食事」の3つの習慣に気をつけて元気な脳を作りましょう!

それでは、脳を元気にする3つの習慣について、具体的な方法を見ていきましょう。

生活習慣を少しずつ見直して認知症を予防

認知症予防のために特別なことをする必要はありません。予防に必要なのは日々の生活の中で、
“社会と交わる”、“適度な運動を行う”、“バランスの良い食事を摂る”など当たり前のことばかりです。
どれもすぐに実践できるので、早速今日から生活習慣の改善に取り組んでみましょう。

3つの生活習慣で若々しく元気な脳に

脳を活性化させて認知症を予防!

3つの生活習慣の具体例を紹介!

社会・知的活動

知り合いを増やしてコミュニケーションの機会を増やす
  • 顔見知りや近所の人に
    積極的に挨拶をする

  • 行きつけの場所を作る

  • ボランティア活動に
    参加する

脳のエクササイズになる知的活動に取り組む
  • 新聞や本を
    声に出して読む

  • 日記をつける

  • 熱中できる
    趣味を持つ

適度な運動

日常生活に運動の習慣を取り入れる
  • エレベーターは使わず
    階段を使う

  • 週に3回30分の
    ウォーキングを行う

  • 予防体操などに
    取り組む

  • 認知症の予防体操はこちらをチェック!
慣れてきたら運動×認知のトレーニングにチャレンジ!
  • 計算しながら
    ウォーキング

  • 社交ダンス

  • ゲートボール

バランスの良い食事

認知症予防のための食事の仕方を身につける
認知症予防食品※を献立に取り入れる

※バランスよく摂取すると認知症の発症が抑えられるといわれている食材のこと。

  • 大豆に含まれるイソフラボンには、認知症の原因となる「アミロイドB」の蓄積を抑える効果があります。

  • 最近の研究で一日あたりの乳製品の摂取量が128g増えると、認知症の発症リスクが2割減るという発表がされました。

  • 認知症予防に効果があるとされるビタミンA、C、Eなどを豊富に含み、リコピンなど体内の老化を抑える抗酸化作用の高い栄養も摂取できます。

  • 海藻類に含まれるカリウムやマグネシウムなどのミネラル成分は、認知症の原因となる高血圧や動脈硬化を予防するといわれています。

治療方法も日々進歩。発症してもあきらめないで

さっそく今日から予防生活を実践するぞ!…だけど、 それでも発症する可能性は0じゃないよな。

もちろん、予防をしても認知症にかかることはありますが、治療方法の研究もちゃんと進んでいるのでご安心を。

認知症専門医の数も増え、新薬の研究や、早期発見による症状の進行を抑える取り組みも行われるようになりました。

自分や家族の変化に日々注意を払って早期発見を心がければ、発症後も元気に過ごすことができるので、前向きに考えるようにしましょう。

認知症治療の研究は日進月歩!「ひょとしたら…」と思ったらすぐ病院へ

認知症治療の研究は日々進んでおり、世界中で新薬の開発が行われています。
使用を承認された治療薬の数も増え、早期発見のための検査方法も確立しているので、
「ひょっとしたら…」と思い始めたら、まずは病院に行って相談してみましょう。

症状の進行を遅らせたり、改善するためには早期発見が重要!
まずは気軽に「認知症外来」への受診を

「まだ大丈夫」なうちから受診することが
もしものときの早期発見につながります
認知症はある日突然発症するものではなく、必ずその前段階として軽度認知障害(MCI)という状態になり、この段階での早期発見と早期治療が認知症治療において最も重要だといわれています。
そのため「同じことを何度もいったり、聞いたりする」「近所の道で迷ってしまった」など、普段の生活の中で少しでも気になることがあった場合は、一度病院の「認知症外来」を受診してみることをおすすめします。抵抗がある場合は、お世話になっているかかりつけ医に相談したり、最寄りの地域包括支援センターの認知症相談窓口へ足を運んでみてください。
認知症の診断が可能な診療科
認知症外来(もの忘れ外来) 神経内科 神経科 精神科 老年内科 脳神経外科
認知症の前段階といわれる
「軽度認知障害(MCI)」って?
軽度認知障害(MCI)とは、「日常生活に支障が出ない程度に認知機能が低下している状態」のことを指します。軽度認知障害の段階で病院に行き、早期の治療や生活習慣の改善に取り組めば、症状の改善や認知症の発症を抑えることも可能といわれています。

出典:厚生労働省ホームページ

自分や家族にこんな兆候が現れたときは、病院への受診を心がけましょう

世界中の大学、研究所、企業で進められているアルツハイマー型認知症治療薬の研究・開発

国内で認可されている薬が最近増加。
将来的には予防薬の開発も!?
日本の認知症患者の半数以上を占めるのは、アルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症治療薬の開発は、世界規模で進められており、日本国内でも認可されている薬が増加しています。これらの薬は、重症度や行動・心理症状、患者背景に合わせて選択する必要があり、認知機能の低下の進行を遅らせる効果があるといわれています。そのなか、最近ではアルツハイマー型認知症の病理に作用する薬が認可されており、将来的には認知症を発病前に発見し、予防する時代がくるかもしれません。

※出典:エーザイ株式会社ニュースリリース

国から認可を受けた認知症治療薬とその効果

※認知症の治療は医師やご家族の指導・支援の上、行いましょう。

「いつまでも若くいられる」と前向きな気持ちを持ってあきらめない姿勢で予防に取り組みましょう

今の医療技術では、発症した認知症を治すことはできません。だからこそ「仕方がない」とあきらめるのではなく、自分の体の変化に気をつけ、日々の生活の中で予防や早期発見に努めることが重要となります。いつまでも元気にイキイキとした毎日を送るためにも、「自分の脳は若くいられる」という前向きな気持ちを大切にしましょう。

監修/遠藤英俊先生(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 長寿医療研修センター長 老年内科部 部長)
参考/『最新 ボケない! “元気脳"のつくり方』遠藤英俊 著