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Dr.コラム

食と排泄の“腸”イイ関係!

下痢や便秘を招くような食生活は“がん”などの生活習慣病のリスク大

山口トキコ先生

Profile

日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員・日本外科学会専門医。マリーゴールドクリニックを開業し、患者に下痢や便秘対策などのアドバイスを行う傍ら、腸や肛門の健康をテーマにテレビやラジオでも活躍。
著書に『本気で治したい人の腸の不調』(学研パブリッシング)など。

つらい便秘や下痢などの腸の不調は、偏った食事や生活習慣によるものが多いことを知っていますか。腸の不調を感じたら、普段の食生活を見直すきっかけにしましょう。偏った食事や生活習慣によって発症する病気のリスクとは?腸が喜ぶ食生活とは?腸の健康について、自然治癒力を高める療法に力を入れて取り組んでいるマリーゴールドクリニック院長 山口トキコ先生に教えていただきました。

腸の不調から、生活習慣病を招く食生活を見抜く!

腸の不調の多くは大腸であり、普段の食生活が原因であることが多い

最近、腸の健康が注目を集めるようになりましたが、腸の機能や役割を皆さんはどれくらいご存知でしょうか。腸には食べものから栄養素を吸収するという役目がありますが、大腸小腸では役割が異なります。
まず食べたものは胃で消化され、小腸にいき、主に栄養分が吸収されます。次に大腸で水分やミネラルが吸収され、その残りが便となります。

日本人に多い生活習慣病

小腸は免疫細胞などがある重要な器官なので、がんの発症率は全消化器官の約2%にとどまるくらい小腸の病気は少なく、皆さんが「腸の不調」と言っているのは、主に大腸の話になります。
大腸の不調のサインは便という形で分かりやすく現れるので、慢性的な下痢や便秘が続いているようでしたら、腸内環境の悪化が考えられます。
高齢の方の場合など、腸そのものに重大な病気がある可能性も否めませんが、まずは食をはじめとした生活習慣の乱れを疑ってかかるべきです。
まずはチェックリストを使って、普段の食生活を振り返ってみましょう。

例えば、上のチェックリストにあるように、食事のリズムが乱れていたり、食事内容が偏っていたり、お酒をたくさん飲んだりしていませんか。一つでもチェックがついた方は食生活に注意しましょう。
胃に食べ物が入ったときに、大腸が便を送り出す準備に入る「胃・結腸反射」を整えるためにも、規則正しい食事は大切ですし、肉中心で野菜をあまり食べないようだと腸に負担をかけてしまいます。
20年スパンの研究になるので現段階で一概には言えませんが、「日本人の食生活が欧米化してから大腸がんの患者数が増加している」というデータや、反対に「乳酸菌を摂っているとがんの発症率が少ない」といったデータも報告され始めています。

食生活の改善により、死亡原因として発症するがんの割合は35%も予防できると言われているので、下痢や便秘が続くような食生活はがんの発症に影響してくる可能性があります。また、偏った食生活を続けているとほかの生活習慣病も招きやすくなります。生活習慣病のリスクを減らすためにも、腸の状態を現す「排便」から自分の食生活を振り返ってみましょう。

規則正しい排便リズムは、規則正しい食生活にあり

ポイントは食物繊維と水分、適度の油、消化しやすく栄養価の高い食物をとること

食生活の改善ポイントについて、まずは便秘の場合から解説していきます。 食生活が関わる便秘は主に、腸の働きが鈍くなって便意を感じにくくなっている「ガマン型」と、腸の働きが低下している「パワー不足型」に分かれます。

日本人に多い生活習慣病

共通して言える対策は、食物繊維を十分に摂ることです。また特に「ガマン型」の場合、水分をしっかり摂ることが大切です。1日2ℓの水分補給が必要ですが、1日3食、野菜もきちんと摂っている方であれば、食事から800mlの水分を摂っているので、コーヒーやお酒などの嗜好品は計算に入れずに1.2ℓの水分を1日かけてまんべんなく摂りましょう。
また、アーモンドやオリーブオイルには大腸まで届いて排便を促すオレイン酸が含まれているので、これらを適度に摂るのも良いでしょう。
慢性的な下痢の場合は食物繊維も必要ですが、消化しやすく、しっかりと栄養を確保できる食物を摂ることがポイント。消化しやすいように細かく切ったり、よく煮込むなど調理の工夫もしてみてください。

腸が正常に働くようになると、バナナ程度の硬さと太さで、バナナ1本~1本半の量の排便が出るようになります。 色は黄色もしくは少し緑がかった色で、一定のサイクルで出ます。1日に1回出なくとも、2~3日に1回など、同じサイクルで排便があれば問題ないでしょう。
規則正しく体にやさしい食生活を意識して続けるようにすれば、排便リズムも整います。そのような排便リズムとなる食生活こそ、さまざまな病気を防ぐもとになるのです。

朝食は必須で、たくさんの食品が摂れる和食中心の食事が理想的

4つの食事鉄則を取り入れて腸にやさしい食事を

腸が正常に働くようになるための「腸にやさしい食事」の秘訣を解説していきます。
ポイントは「1日3食きちんと食べる」「よく噛む」「食事を楽しむ」「食物繊維をたっぷり摂る」 という4つの食事鉄則です。

1日3食きちんと食べる

一つ目のポイントは、「1日3食きちんと食べる」。特に重要なのは朝食です。
”という漢字は、右のように「十月十日」で構成されています。「人は十月十日(とつきとうか)で生まれる」という言葉があるように、朝は生まれ変わりや始まりを指す時間です。
朝食を胃に入れると「胃・結腸反射」から排便が促され、良いサイクルを生むきっかけになります。また、朝食を食べるために早起きをすることで、1日に余裕が生まれ、規則正しい生活リズムをつくることにつながります。

よく噛む

二つ目のポイントは、「よく噛む」こと。
呑みこむ前にしっかり噛むことで、唾液を分泌し消化を助けることができるので、胃腸の負担を少なくできます。

食事を楽しむ

三つ目は「食事を楽しむ」。献立に旬の食材を取り入れたりすると楽しみが増えますね。
また自律神経を整えるという効果もあります。

食物繊維をたっぷり摂る

最後に「食物繊維をたっぷり摂る」こと。しかも、いろいろな食材から、食物繊維を摂ることが重要です。

少食による生活習慣病対策

腸が喜ぶこの4つの食事鉄則の実践において、たくさんの食材を使うことが多い和食は、理想的な食事と言えます。味噌汁にたっぷりと具を入れたり、旬の食材を炊き込みご飯でいただくなど、一つのメニューで、食物繊維などさまざまな栄養を摂ることができます。
食のバリエーションも多く、大麦や玄米であれば、よく噛むため食べすぎも防げます。

腸が喜ぶ生活習慣を身につけると、心と体に好循環が生まれる!

腸にとっては、ストレスを溜め込まないようにすることも大切です。ストレスは腸だけでなく、体全体の不調にもつながりかねないので、心身ともにリラックスできる時間を作りましょう。

ハーブティーやアロマなどが手軽でおすすめ

ハーブは体調を整える、気分をリラックスさせるなどの効果がある「薬草」でもあり、胃腸の調子を整えるものも数多くあります。
一方、ハーブなどの天然の有効成分を凝縮した精油の香りを楽しむのがアロマテラピーです。気持ちが張りつめていたり、ストレスが高じたときは香りの力を借りてリラックスタイムを充実させてもよいかもしれません。

マッサージやお風呂も効果的

時間に余裕があるときは、お腹をへこませたり、ふくらませたりする簡単な運動や、腸の流れに沿った「の」の字マッサージなども効果的です。
お風呂はシャワーですませるだけでなく、38~40℃のお湯に15~20分つかってゆっくり温まると、全身の血行が良くなり、副交感神経が優位に働き、自律神経を整えることができます。

食事に加えて、腸が喜ぶ生活習慣を大切に

食事以外でも、腸によい習慣を少しずつでも取り入れていくと、体全体に良い効果が得られるでしょう。
それから朝の時間にゆとりを持つこと。夜は早めに寝て気持ちをリセットし、“生まれ変わりの朝”に新たな気持ちで1日をスタートさせてください。そして、下痢や便秘が続くようであれば、少しずつでも食生活を見直していきましょう。
腸が喜ぶ食べ物は、体そのものも喜びます。良い便が気持ちよく出たら、また同じ気分になれるような食事を摂ってください。食事を楽しみ、暮らしを楽しむ。自然に食事をおいしいと感じられるようになることが、生活習慣病を防ぐことにもつながるのではないでしょうか。

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